夏の甲子園大会79年ぶり中止決定。コロナ感染拡大の影響で苦渋決断。「感染リスク」「学業の支障」も判断理由!
日本高野連は2020年5月20日、第102回全国高校野球選手権大会(8月10日開幕、甲子園)と 6月下旬から8月初めにかけて予定していた49地方大会の中止を決定しました。
大阪市内の日本高野連事務局でオンラインでの運営委員会、理事会で正式決定し、ホームページで発表。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、49代表をそろえることも、移動、宿泊を伴う全国大会の開催も難しく苦渋の決断となったようです。
夏の甲子園大会中止は米騒動の1918年、戦争悪化の41年に続いて79年ぶり3度目。
新型コロナウイルスによって、今春の選抜大会も史上初の中止になった。
全国9地区の春季大会、47都道府県すべての春の大会(沖縄は準々決勝後打ち切り)も取りやめとなっています。
感染リスク、学業への支障!各大会中止の具体的な理由。
日本高野連と主催の朝日新聞社は2020年5月20日、第102回全国高等学校野球選手権大会の運営委員会をWEB会議で行い、8月10日から開幕予定だった甲子園大会と、49代表校を決める地方大会の中止を決定しました。
各大会中止の具体的な理由
地方大会は、全国で約3800校が参加。6月下旬から8月はじめに渡り、全国の約250球場で開催される地方大会の感染リスクを完全になくすことはできないことが1つの理由となった。
また、休校や部活動停止の措置が長期間に及んでおり、練習が十分にできていない選手のけがの危険性や、授業期間確保のため夏休みを短縮し、登校日などを増やす動きがある中で、地方大会は学業の支障になりかねないことも判断理由となった。
大会運営を担う役員や審判員を十分確保できないこと、医療スタッフに球場への常駐を例年通り要請できないことも予想され、公的施設の使用制限で市場休場が限られる可能性もある、ともした。
全国大会に至っては、開催を前提にし、専門家の助言も得ながら「3つの密」を避けるために無観客、抽選会、甲子園練習、開会式の取りやめ、検温や消毒の実行など感染防止策を想定してきた。
だが、最終的には大会期間が2週間以上に及ぶこと、代表校が全都道府県から長時間の移動で集合し、集団での宿泊を終えた後に地元に帰郷することは、感染と拡散のリスクが避けられないことが、中止決定への理由となった。
学業への支障をきたす可能性があることも判断材料となった。
全国大会の中止は、米騒動による1918年(大7)の第4回大会と、臨戦態勢を理由とされた1941年(昭16)の第27回大会に次ぐ79年ぶり3回目。そのときでも地方大会は両大会とも開催されました。
1942年(昭17)から1945年(昭20)の4年間は太平洋戦争により、大会は中断しています。
各地方で独自大会開催へ早期決断、3年生に最善の花道を!
日本高野連は2020年5月20日、夏の甲子園大会と出場権をかけた地方大会の中止を発表した。各地方で独自の単独大会開催への動きがあり、日本高野連、朝日新聞も財政面の援助など3年生最後の舞台へ今後も知恵を絞っていくようです。
夏の甲子園と49地区大会の開催可否決定のリミットは、実は6月初旬だったようです。しかし緊急事態宣言が解除されていく中、日本高野連はあと2週間待たずに中止を決断した。
八田会長は「なぜもっと早く決定できなかったのか、もう少し延ばせるのではないかと2つの考えがある」。との見解を示しています。
4月26日、高体連が全国高校総体(インターハイ)の中止を決定。センバツの時と同様、野球も早く決断しろという声が出た。一方で、野球関係者は、最後まで開催の可能性を探るべきと願っていました。
結果として、早い段階で中止を決めたのは、全国の3年生が最後の試合をできるようにとの配慮からだった。
各地方で独自大会の動きが活発化しているが「本大会がどうなるか決まらないと動けない」と話す地方高野連関係者は多かった。これで、未定だった地区も堂々と検討できる。
財政面の援助決定も大きい。
朝日新聞社の渡辺雅隆社長は「可能な限り支援できれば。何とか最後にユニホームを着て活躍できる場を作れないかという思いは共通している」と明かしています。
コロナ禍の中、日本高野連と各都道府県高野連が最大公約数を探して情報交換。3年生に今できる最善の花道を準備すべく、この日の結論となったようです。
渡辺元智氏、高校球児へ「国難の中、恩返しの番」
日本高野連が2020年5月20日、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から「第102回全国高校野球選手権大会」の中止を決定。夏の甲子園大会中止は戦後初めて。
芸能界などで活躍する元高校球児や野球愛好家らから、夢を見失った球児たちに激励やエールの声が多数届いいています。
渡辺元智氏(横浜高元監督)は、中止が決まり、奈落の底に突き落とされた球児もいると思う。私もなかなか言葉が出てこない。
今、彼らを救えるのは指導者の適切な助言であり、両親の愛情ある励ましではないだろうか。可能なら、ミニ甲子園なのか、県単位の大会なのか、何かしてあげられたらと願う。
同時に、頑張ってきた球児たちだからこそ、できることがあると思う。
医療従事者の方々。ごみ収集の方々。この社会を成り立たせるために尽力されている人たちに、全国の球児が手をつなぎ、何かメッセージを送ることができるはずだ。
球児は多くの応援を受け、ここまで来ることができた。国難の中、今度は恩返しの番。現場で大変な思いをされている皆さんに「頑張って下さい」という気持ちを送る時ではないだろうか。若い彼らには立ち上がる力がある。
センバツから中止が続き、希望を失った球児もいるだろう。
だが、今こそ目標を持ってほしい。
私も若い頃、挫折を味わい、自暴自棄になった時もあった。ただ、そこから指導者の道が開けた。甲子園大会はなくなっても「野球」ということを忘れなければ、やってきたことは決して無駄にはならない。
プロを目指しているなら、大学からでも、社会人からでも、軟式からでも行ける。子どもたちに教える道もある。
「少年よ、大志を抱け」はクラーク博士の言葉。
そういう気持ちでいれば、必ず生きる喜びが生まれる。自分自身に明るい光をともしてくれる。そう信じている。
西武松坂、甲子園中止に「本当の苦しさ当事者にしか」
西武松坂大輔投手が、甲子園大会中止を受け、思いの丈を打ち明けています。
日本高野連と主催の朝日新聞社が 2020年5月20日、第102回全国高等学校野球選手権大会の中止を正式に決定。
1998年に横浜高で、春夏連覇を果たした松坂投手は球団を通じてコメントを発表。
平成の怪物と呼ばれた自身が抱く甲子園への思いや、奪われた高校球児が集大成として披露するための新たな舞台設立を提言しています。
以下、コメント全文
正直、開幕の3カ月前の決定は早すぎるという思いはありますが、中止という重い決断をされた日本高野連、主催者の方々は、議論を尽くされた上での決定だと思います。
決断をもっと遅らせることも出来たのかもしれませんが、「夏の甲子園」と代表校決定の「地方大会」はセットでしょうし、学校自体が再開されていない現状では仕方がない事だと思います。
センバツに続き、夏の甲子園の開催が無くなった事。もし、自分がその立場に身を置いた事を考えると選手の皆さんに掛ける言葉は正直、見当たりません。
本当の苦しさは当事者にしか分からないですから。事実をどう受け止め、次に向かうかという問いに答えも見つかりません。甲子園というものは、それだけ大きな存在です。
ただ、選手の心に寄り添い、アイデアを出し、実行することは大人に出来ます。「出来ない」ことを決めるだけではなく、「出来ることは何か…」を考える。従来の形の地方大会でなくとも、仲間と積み上げた日々を証明する舞台を用意してもらいたいです。
今、ラグビー界では高校3年生の選手支援へ、プレー動画をSNSで拡散する「#ラグビーを止めるな2020」のプロジェクトが話題を呼んでいると聞きます。
選手個々や、学校が独自で発信することがルール上難しいのであれば、例えば各都道府県の高野連が許可した上で各学校から送られた動画をのせる。投手ならブルペン投球、野手なら打撃練習、紅白戦の様子でもいいと思います。
球場を使えず、移動のリスクがあるならば、学校のグラウンドでの取り組みを「インターネット上のグラウンド」で紹介することは出来ないでしょうか。地方大会を見ることも出来ないプロ、大学、社会人の関係者も目にすることが出来るかもしれません。
これは1つのアイデアであり、本当にちっぽけなことです。願わくば、新型コロナウイルスの感染が終息し、選手たちが1試合でも多くプレー出来ることを祈るだけです。
高校球児受け入れ…各大学も基準見直しへ!
センバツ、春季大会に続き、夏の甲子園も中止となり、球児の受け入れ先である大学野球部は対応を迫られています。スポーツ推薦の基準見直しを検討する大学も出ているようです。
東京6大学の名門・明大の場合、スポーツ特別入試の競技成績基準は、
(1)全国大会出場か、
(2)関東、近畿など地区大会ベスト4以上。
高2までにクリアできなかった高校生を考慮し、これまでの成績や実力が基準相当なら、(1)、(2)の成績を収めていなくても選抜できるようにすることを検討している。合格者の競技レベルは下げずに、獲得する方法を探っている。
関西のある強豪大も似た対応を取っています。
全国大会出場や近畿大会8強などを選考基準とするが、本年度はなくす方向。
もっとも、野球部関係者は「2年秋の段階で欲しい高校生には声をかけているので、大きな影響はない。監督同士の長年の人間関係で決まることが多い」と明かしています。
ただし、大会中止で実戦を見られていない分、8月に予定するセレクションでは例年よりも実技を重視したいという。
現場への影響に、明大・田中監督は、「幸い、うちを志望してくれる高校生は1年夏から甲子園に出ている人がいる。2年までの時点で既に資格ありの子を、まず追いかけている」と話す。
近大・田中監督も、「来年の新入生は昨年からお願いしているので、甲子園がなくても支障はない」。
伝統やブランド力があり、志望する高校生も多い大学では、それほど影響は出ていないようだ。ただし、これは来年度の新入生の場合。再来年度は、新たな対応が必要になるかも知れない。
地方の大学は、どうか。
全日本大学選手権の常連である大学の監督は「動けない」と漏らす。
「自分の目で見て、これは、という選手が、たまにいる。それができない」と高校の活動休止が長引き、スカウティングに影響が出ていると認めた。「まずは情報収集。緊急事態が明けたら一気に高校に連絡したい」と備えている。
送り出す側の声も聞くと。
都内の強豪私立高校は、現時点でスポーツ推薦で進学が内定した3年生は1人だけ。ただ、昨年同時期も1人。例年、大学の春季リーグ戦が終わる6月以降に動きが活発化するという。これからだ。
ところが、今年は大学リーグも延期や中止が相次ぎ、先が読めない。同校監督は「春季大会がなくなり、大学のスカウトからの照会がなくなった。厳しくなりそうな雰囲気はある」と不安を口にした。